生物と化学物質
化学物質による環境汚染問題というと、ダイオキシン問題や公害病など、人間がその物質に触れたり、その物質を取り込んでいる動植物や魚などを食べたりすることで、健康被害を受ける物質にまず目が行きがちです。しかし、人間にとって害となる化学物質だけを調査していても、十分とは言えません。
例えば、ある化学物質が、生態系を構成するいずれかの生物に深刻な悪影響を与え、それによって生態系のバランスが変わってしまったとしましょう。そうすると、他の生物や環境全体に対して、どこにどのような形での影響が発生するか分かりません。私たち人間を含むどの生物も、思いもよらぬ理由で、直接・間接にその化学物質の脅威にさらされる恐れがあるのです。
それゆえに、動植物に対する化学物質の有害性の評価(生態リスク評価 Ecological Risk Assessment)が必要とされています。改正化学物質審査規制法
、改正農薬取締法
では新規化学物質に対して、藻類・ミジンコ・魚類を用いた生態リスク評価が求められるようになりました。
そのうちの「藻類」に関しては、一般に、経済協力開発機構(OECD
)が定めたテストガイドライン201(TG-201)に準じた72時間藻類生長阻害試験(Alga Growth inhibition test)が用いられています。生長阻害試験法とは、検査する化学物質を与えた緑藻
を72時間培養して、その生長阻害の様子を見ることで、化学物質の影響を見る方法です。
この方法では、前培養
などの準備を含めると、ひとつの化学物質を調べるのに非常に時間がかかることに加え、培養には特殊な専門家を必要とするなどコスト的な負担も大きくなってしまいます。このため、10万種類以上流通しているとも言われる化学物質を、全て調査することは容易ではありません。
このような状況から、世界中で、迅速かつ簡便な化学物質生態リスク評価の手法が求められるようになってきました。
また現状、リスク評価の基準が化学物質による生長阻害のみで、毒性発現のメカニズムなどの質的評価が行われていないことも、環境保全の推進のためには不十分であるという指摘がされるようになってきました。